2014年8月,広島市安佐南区八木地区を中心とした土石流災害
地形図と地質図の三次元イメージ : 土石流の発生箇所付近
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  • 2014年8月20日,広島県に降った豪雨によって,広島市安佐南区や安佐北区では,付近を含め160箇所以上の土砂災害が発生しました。
  • 災害の概要は,死者74名,負傷者44名,住宅被害5,200棟以上,非住宅被害450棟以上という,甚大な土砂災害でした。
  • 本ページでは,広島市安佐南区八木地区で発生した土石流について,事務局の考察を掲載しています。
  • 複数発生した斜面の尾根部の地質は中生代ジュラ紀の「湯来層(泥岩・砂岩,付加体)」で,この部分で浅層崩壊が発生した沢筋もありました。
  • 一方,多くの浅層崩壊を起こした斜面や谷筋の地質は,中生代白亜紀後期の「広島花崗岩類(黒雲母花崗岩など)」ですが,地表は風化により「マサ」と呼ばれる砂層(未固結層)に近い性質に変わっていたと思われます。
開発行為以前の地形状況 : 1950年頃及び1992年頃
古地形図(1950年頃)上でマウスクリックすると,同じく古地形図(1992年頃)を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。
  • 1950年頃の古地形図は,基本的に太平洋戦争以前の地形図が基本なので,地名は右から読んでください。
  • 左端の「上組地区」を始め各地区は,「扇状地」あるいは「沖積錐」の上に形成された集落と思われます。
    すなわち, 土石流で押し出された土砂が堆積してできた土地ということになります。
  • 1992年頃の地形図によると,殆どの沢や谷の出口には,団地と呼ばれている住宅地が広がり始めたことがわかります。
  • 二つ古地形図を見比べると,「八木」という町名は新しいことがわかります。
標高段彩図における地形的特徴
  • 本図は,陰影付平面地形図に,標高によって色を変えて彩色した段彩図をオーバーレイした図です。
  • 同じ標高を示すバンドが緩いカーブを示している3箇所は,かつての扇状地すなわち「古扇状地」の特徴を持っている土地になります。
  • 表層崩壊や深層崩壊がトリガーとなって発生した土石流のうち,礫などの粒径の大きい成分は,谷の出口付近で沖積錐(扇状地の傾斜な急な部分=土石流扇状地)として堆積します。 この土石流扇状地は,しばしば同心円状の等高線を持つことで知られています。
  • この特徴を持つ地形を,安佐南区の八木地区で調べてみると,最も形状が鮮明なのは「谷C」の出口と,「谷B」を含む太田川の右岸一帯です
    これら扇状地には,小さな谷が複数本存在しており,恐らく地質時代の新生代以降に土石流が何回も発生していたことを示唆しています。
  • 今回最も規模が大きく,被害も大きい土石流が発生した「谷A」の土石流扇状地は,それほど大きくはありません。
    過去の活動は余り活発では無かった可能性が考えられます。
  • 表層が「マサ(風化花崗岩)」であるような斜面にできた谷や川の出口付近に扇状地(沖積錐)が存在する場合,そこは「土石流が発生して,押し出された土砂が堆積する可能性のある土地」と考えて,リスク軽減を図るべきでしょう。 最善策は「三十六計逃げるに如かず」なのですが。
土石流の特徴

  • 「谷A」は,今回で最も規模が大きくかつ被害の大きかった土石流を発生させました。
    阿武山の南西斜面の標高430m付近で発生し,その流下距離は水平距離でおよそ1.4km,流下した比高(標高差)は約420mにも及んでいます。
  • 八木四丁目の「谷B」は,危険区域と公表された土石流扇状地(沖積錐)の上部に留まりましたが,流下距離は約0.7km,比高は約270mでした。
  • 崩壊発生地点における渓流の河床傾斜は「谷B」の方が急ですが,土石流の規模は「谷A」の方が遙かに大規模でした。
  • 原因としては,「源頭部の表層崩壊の規模が大きかった」,「渓流に堆積していた土砂の量が多かった」などが考えられます。
降水量・土壌雨量指数について

(上段)半月以上前からの雨量の状況です。 連続雨量と違って,雨量ゼロによるリセットをしていないので「累積雨量」としました。
  • 今回の土砂災害(土石流)では,「最大時間雨量を示した時刻と土石流が発生するまでの時間差」と「土壌雨量指数が200を越えてから土石流が発生するまでの時間差」のいずれもが,殆ど無かったことが判明しています。
  • このような特徴は,浅い土層が滑落する「表層崩壊」が引き金になって土石流が発生する場合に多く見られるもので,このタイプの土石流は,日本全国の山地のどこでも発生する可能性があります。
  • 注 この時間差の殆ど無い土砂災害の例としては,「2009年7月に山口県防府市で発生した土石流災害」が挙げられます。
     同災害では,特別養護老人ホームに流れ込んだ土石流で7名が犠牲になるなど,合計14名が亡くなっています。
【引用情報と参考情報】

【引用情報】

【参考情報】

【お断り】

  • 本ページは,従来サイト「八木地区を中心とした広島土石流災害に関する地質情報及び関連の情報」として公開していたページを,改題の上,最新の知見を基にして内容を更新しました。