土壌雨量指数と土砂災害について
土壌雨量指数とは

気象庁による「土壌雨量指数」の原理図。 詳しくはこちらをどうぞ

 降った雨が土壌中に水分量としてどれだけ貯まっているかを,「タンクモデル」という手法を用いて指数化したものです。

 気象庁では,雨量と降水短時間予測雨量から,5kmメッシュの土壌雨量指数を推定計算して,「土砂災害警戒情報」などの発表基準に使用しています。

 基準値は 場所によって異なっており,例えば,広島市安佐南区では「注意報:90」,「警報:115」です。 すなわち,土壌雨量指数が115を越えそうな場合,「土砂災害警戒情報(大雨警報)」を発表する,というわけです。
 警報基準値はこちらです

 ここで住民にとって一番の問題は,「基準値越えしてから,実際に土砂災害が発生するまでの余裕時間はどれだけか?」ではないでしょうか。

 事務局が独自に調査した結果を以下に示します。

表層崩壊型の例

「0日」は,土砂災害が発生したと報道された時刻です。 事務局Iの調査ではないので,正確性は未確認です。

 3箇所に共通している特徴は以下の通りです。
  ・土壌雨量指数が160~260で表層崩壊が発生していること
  ・その指数に達する降雨時間が6時間~12時間であること
 すなわち,雨が降り出してからの余裕時間は,最短で6時間,長くても半日程度である,という特徴です。

 自宅背後の斜面が,以下の場合,雨の降り方によっては 浅層崩壊 と呼ばれる崖崩れが発生する危険性があります。
  ・傾斜が30度以上
  ・表土層が厚く,比較的軟らかい土壌

深層崩壊型の例

「0日」の意味は,表層崩壊型に同じです。

 表層崩壊型に比べると,深層崩壊が発生した時点の土壌雨量指数の値はバラバラですが,概ね以下のような特徴がありそうです。
  ・2日~3日間程度の降雨が続いた後で,雨量が急増したケース: 五条,針原,熱海
  ・雨が何日間も降ったり止んだりを繰り返した後で,雨量が急増したケース: 南大隅,高知
 すなわち,深層崩壊は,最低でも2日ないし3日間の連続雨量の後で発生する傾向にあるようです。

 自宅背後の斜面が,以下の場合,雨の降り方によっては 深層崩壊 と呼ばれる崖崩れが発生する危険性があります。
  ・傾斜が30度以上
  ・強い雨が2日以上連続して降る場合
  ・雨が何日間も降ったり止んだりを繰り返した後で,雨量が急増する場合

土砂災害警戒情報が発表されてから発災までの時間

 表層崩壊型: 仮に土砂災害警戒情報の発表基準が100とした場合,1時間~数時間となります。
  ※2014年8月の広島では,豪雨が降り始めてから土砂災害発生までの時間差は,殆どなかったことがよくわかります。

 深層崩壊型: 同じく100とした場合,12時間~1.5日程度となります。
  ※南大隅の場合は,1週間以上も降雨が続いたのが原因なので,この発災時間の概念には当てはまりません。

 おことわり: ここに述べた内容は,学会等で議論された結果,了とされたものではありません。 このような傾向がある,という問題を提起したレベルです。
 引用などをされる場合は,この点ご注意ください。 詳しくは,ご自身でお調べになることをお勧めします。