令和3年(2021年)7月:熱海市,逢初川で発生した大規模土石流
地形と崩壊地の三次元イメージ:熱海市伊豆山地区
三次元地形図上でマウスクリックすると,国土地理院から公開されている土石流範囲図を表示します。ダブルクリックで元に戻ります。
  • 2021年7月3日10時30分頃,熱海市伊豆山地区を流れる「逢初川」で「土石流」が発生しました。
  • 「逢初川」は,伊豆山地区で最も標高の高い「岩戸山(734m)」の東斜面に源流を発し,伊豆山神社の南側を流れ下る小河川です。
  • 地形図上では,一部暗渠となっている場所もあるので,普段は水量が少ない川だろうと想像します。
空中写真の三次元イメージ:逢初川・盛土部付近
  • 国土地理院の解析結果から,等高線に沿うように作られた幅の狭い道路とその下の盛土が,大きく崩壊していることがわかります。
  • 谷を埋めた土砂の(盛土)の上流域が相当程度広がっているので,長時間の雨による地下水の水圧が上がっていたのでは,と想像します。
空中写真の三次元イメージ:逢初川・土石流堆積範囲図
  • 渓流を出た直後から堆積が始まりましたが,「逢初川の下流部でも河床勾配が10゜を超えているためか,土石流は停止できず海岸道路にまで達してしまいました。
  • 特徴的なのは,左の地図で「伊豆山」と記されている付近から,土石流は逢初川の河道を外れて,道路を下ったことです。
  • これは,伊豆山と記されている付近から東海道新幹線を超すまで,逢初川が「暗渠」になっているからと思われます。
盛土と地すべり,あるいは深層崩壊について
  • ここでは,盛土が豪雨に耐えかねて崩壊するケースを「地すべり」と表記し,自然の斜面が崩壊するケースを「深層崩壊」とします。
  • 土石流が発生するためには,何らかの原因があるはずです。 主な原因を以下に列記します。
     ① 逢初川の上流域~中流域に溜っていた土砂に大量の雨水が混じった結果,粒子間の粘着力が小さくなって流れ出た。
     ② 盛土内部の水位が上昇して盛土の質量が増したため,盛土が滑らないように押さえていた摩擦力を越えた結果,盛土地すべりが発生した。
     ③ 盛土のすぐ下流部の谷底に深層崩壊が発生した結果,支えを失った盛土も一緒に崩壊した。
  • 土石流の発生原因の一つに,川の左岸あるいは右岸に接する斜面での「浅層(深層)崩壊」の発生がありますが,今回はこの崩壊は無かったようです。
  • この土地に利害関係の持たない「斜面,砂防や地質の研究者・技術者」の見解が待たれます。

【引用情報】

【参考情報】

河床勾配:逢初川

国土地理院の「崩壊地等分布図及び土砂堆積範囲図(7月5日)」によりますと,崩壊発生場所は,標高約400m~約340mの範囲です。
また,土石流が堆積した範囲は,標高が約170mより下流域のほぼ全てです。
これは河床勾配(傾斜)が10゜を超えているため,堆積しつつも流下を続けられたからです(傾斜が4゜程度にならないと停止できません)。
なお,標高のデータは国土地理院から公開されている「5mDEM」から推定したもので,実測値ではありません。
雨量と関係:アメダス「網代」
  • 時間雨量が10mm程度の雨が10時間ほど続き,15時間ほどの間を開けて再び強く降り出す,という状態が3回続きましたが,その間も弱い雨が止むことは有りませんでした。
  • これにより,地盤の中に水が溜る指標の「土壌雨量指数」の低下は顕著ではなく,地下水が抜けなかったことがわかります。
  • いずれにしても,土壌雨量指数が200mmに近づいた時に深層崩壊(盛土地すべり)が発生したことがわかります。
  • なお,このようなケースは過去にも存在します。 詳しくはここをクリックしてください
土砂災害警戒区域との関係
‼マウスオーバー‼    地図上にマウスを乗せてください。国土交通省の「重ねるハザードマップ」を表示します。
  • 静岡県が制定した「土砂災害警戒区域(土石流)」の範囲ですが,人家の密集している逢初川の下流域には設定されており,実際に発生した土石流は,その警戒区域内に収まっていました。この点で,ハザードマップは有効だったと評価できます
  • ただし,逢初川の上流域と中流(渓流)域には設定されていませんでした。 この区間に人家が無かったからと思われます。
  • 一方,隣接する「鳴沢川」では,上流部に団地があることから,上流部~渓流部~下流部を含め,ほぼ全域わたって指定されています。
  • 人工地盤(盛土)の崩壊によって土石流が誘発されたことにより,土石流危険渓流の選定基準を変更すべきかもしれません。