1993年9月台風13号による鹿児島県南さつま市金峰町の斜面崩壊
地形図と地質図の三次元イメージ:斜面崩壊発生箇所及びその周辺
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  • 1993年(平成5年)の6月から9月にかけて,九州の南部地方ではしばしば豪雨となり,洪水や土砂崩れなどの大きな災害が各所で発生しました。
  • 9月3日の台風13号に伴う豪雨により,鹿児島県金峰町(当時,現南さつま市金峰町)扇山では,斜面崩壊が発生し,集団避難していた民家が土石流に襲われ,合計20名が死亡した大きな災害となりました。
  • 産総研・地質調査総合センターから発行されている「20万分の1地質図幅『鹿児島』」によると,崩壊した斜面は中生代後期白亜紀の四万十層群で構成され,地質は「泥岩を含む砂岩」とのことです。
  • 同地質図にはこの斜面付近に「断層」を示す記号が存在します。 常識的には,この断層が斜面崩壊に何らかの影響を与えた可能性が考えられます。
三次元空中写真の変遷:斜面崩壊発生地点付近
  • 1993年の土砂崩壊よりも約15年前の空中写真では,斜面崩壊の発生場所には木が生えています。
  • 最新の「シームレス空中写真」でも,斜面崩壊の発生場所には木が生えていて,自然の回復力の速さに驚かされます。
  • 斜面崩壊が発生した斜面は若干窪んだ谷地形なので,過去にも同様の崩壊が発生したと考えられます。周囲の斜面も同様でしょう。
    1975年頃の空中写真では,斜面の麓に「扇山集落」が存在します。 従って,過去の土砂崩壊はこの集落ができる前と考えられます。
  • 最新の空中写真によると,1975年頃に広い範囲に存在した「棚田(千枚田)」のほぼ全てが消滅してしまいました。
    扇山集落の(集団)移転が原因なのでしょうか?
下川(1994ほかによる斜面崩壊の発生機構
  • 「下川ほか(1994)」は,扇山の斜面崩壊は「浅層崩壊(1)」が最初に発生し,続いて「深層崩壊(2)」が発生した,と報告しています。
  • 最初の表層崩壊は,幅約8m長さ15m面積約120m2,崩壊の深さが約0.7mと比較的小規模でしたが,崩壊によって生じた移動体(表土など)は水分が多く含まれていて,斜面の中腹部に堆積していた崖錐堆積物を巻き込んで谷底にまで達したと報告しています。
    すなわち,表層崩壊によって生じた土砂には大量の雨水が含まれており,土石流化して斜面を流れ落ちた,と解釈できるでしょう。
  • 続いて発生した深層崩壊は,深さが2m~3mの円弧状崩壊で,移動体は斜面の中腹に留まったとのことです。 含水が少なかったのかもしれません。
土壌雨量指数による降雨の状況
  • この斜面崩壊が発生した1993年当時,「土壌雨量指数」という概念は一般的ではありませんでした(ただし,実効雨量は一部使用されていました)。
  • 気象庁が加世田で観測した雨量データを入手して,時間雨量・累積雨量・土壌雨量指数を計算してみました。
  • 扇山の斜面崩壊は,9月3日の16時30分から50分頃に発生したと言われています(研究者によって違いがあります)。
  • その時刻を左のグラフに当てはめてみると,土壌雨量指数が200を超えたころであることがわかります。
  • 本ウェブサイトの「土壌雨量指数のページ」を参照すると,表層崩壊型の傾向「土壌雨量指数:160~260」に合致することがわかります。
  • また,同ページによるとその指数に達する時間は「6時間~12時間」なのですが,扇山では前日から降雨が断続的に続いているので,この時間帯よりは長かったようです。
【記事・引用情報と参考情報】

【記事】

  • 20万分の1地質図幅『鹿児島』が刊行されたのは1997年です。
  • 本斜面崩壊に関する報告書(参考情報)は,1994年から1995年に掛けて発表されており,地質図の断層について言及した報告書はありません。
  • ただし,公刊された全ての報告書などを確認していないので,断層に気づいていた研究者や技術者がいたかどうかまではわかりません。
  • 土壌雨量指数と実効雨量は,共にタンクモデルという流出解析手法による推測値なのですが,前者は3段のタンクモデル,後者が1段のそれという違いがあります。  詳しくは,国土技術政策総合研究所の「2.基準雨量設定手法の種類」を参照してください。

【引用情報】

【参考情報】