鉈でたたき割ったような 類型:自然
  立石(たていし) 岩手県一関市大東町
謂われ,特徴,エピソード等

 岩手県一関市大東町鳥海地区に伝わる『鳥海風土記』(明治5年)によれば,「鳥海三名石の一つで,高三丈壱尺(約9m)廻六丈三尺(約19m)」と記述されています。

 蓬莱山(787m)山頂の南東方向の中腹,標高約440mの斜面に唐突に存在する垂直に切り立った巨岩です。

 昭和30年代は小学校の遠足コースにもなっており,奇岩の背面から頭頂部に上ることができます(写真3)

地形・地質の概要

 産総研・地質調査総合センター発行の1/20万シームレス地質図によると,奇岩「立石」が立地する場所の地質は,古生代石炭紀(約3.5億年前~約3.0億年前頃)の「火成岩」です。
 火口から噴出した「流紋岩」や「デイサイト」などで構成されており,その後の地殻変動によって現在の場所まで隆起しました。

 奇岩の前面の特長は,鉈でたたき割ったようなほぼ垂直な平面で,どう見ても人工的な工作のにおいが感じられます。
 もし仮に,人工によるものではない,とした場合,その原因は,風によって運ばれた砂粒によるヤスリ効果などが考えられますが,風向・風速あるいは砂粒の供給先など,検討すべき事項が多いので,現時点で結論を出すことはできません。

周辺の観光地やジオサイト

☆ジオサイト
 鳥海風土記・奇岩鬼石(おにいし)牛石(うしいし)
 猊鼻渓:一関市大東町が源流である砂鉄川が,約2億5千万年前以前の石灰岩を侵食して形成した渓谷です。 約2kmの渓谷には,高さ100mを越す断崖絶壁が存在します。 一年を通して運行される船下りから,断崖を観察すると良いでしょう。
  厳美渓:栗駒山が源流である磐井川が,栗駒火山の噴出物(流紋岩類)を侵食してできた渓谷です。延長は約2kmで,多くの奇岩類や甌穴などが存在します。
 三陸ジオパーク: ジオパークの範囲は,青森県八戸市から岩手県の沿岸を縦断して宮城県気仙沼市までの南北約220㎞,東西約80㎞です。 その海岸線は約300㎞にもおよぶ日本一広大なジオパークです。本奇岩が存在する岩手県一関市大東町の東隣は,同県陸前高田市や宮城県気仙沼市となっており,三陸ジオパークの南部エリアに該当します。

☆観光地
 毛越寺:嘉祥3年(850)慈覚大師円仁が開山し,奥州藤原氏二代基衡公と三代秀衡公の世に隆盛を見た天台宗のお寺です。「もうつうじ」と読みます。 大泉が池を中心とする浄土庭園が名所となっています。
  中尊寺:金色堂で有名な平泉中尊寺の寺伝では,慈覚大師円仁が開山し,奥州藤原氏初代の清衡公が開基したとされています。 天台宗の東北本山で,金色堂を初めとする3000余の国宝・重文伝わっているそうです。


 立石の前面

立石の側面。鉈で割ったような垂直な面をしています

立石の背面。こちらは登れます
奇岩近傍の三次元地形イメージ

奇岩「立石」が属する「北上高地・南部」は,「隆起準平原」と言われています。
南の浅い海底で生まれた北上高地・南部は,陸地となってから受けた侵食作用,特に最終氷期における「周氷河侵食作用」によって,なだらかな斜面となりました。
この奇岩は,そのような緩斜面の上に,ポツンと残された岩塊と言えるでしょう。
交通概要(公開時の情報)
  • 鉄 道:JR東日本の大船渡線の摺沢駅下車。 平日で1日に4往復の一ノ関市営バス大東線の市之通行きに乗車し,約25分の上野で下車します。
       鳥海川を渡った西側の尾根の中腹にあります。
       国土地理院の地図には,奇岩に達する歩道の記載が無いので,十分なる事前計画が必要でしょう。また,民地の可能性もあるので十分ご注意ください。
  • 自動車:東北自動車道を水沢ICで降り,国道4号水沢東バイパスを南に進みます。 奥州市惣前町で左折して県道251号に入ります。
       奥州市江刺田原大日で右折して国道456に入り,一関市大東町猿沢まで進みます。 左折して国道343に入り大東町渋民横張に到り,左折して県道262を
       北に進みます。途中大東町八日市や前畑を経由して奇岩のある大東町鳥海上野まで進んでください。 以下の行程は公共交通に同じです。
引用情報,参考情報,お断りなど

【引用情報】
 ・国土地理院 > 地理院タイル(地形図,5m・10mDEM)  国土地理院利用規約

【参考情報】
 ・産総研・地質調査総合センター発行 > 20万分の1 シームレス地質図

【お断り】
 ・奇岩の地図は「奇岩近傍の三次元地形イメージ」に変更しました。地形図については,地図検索のページをご覧ください。

Powered by GeoInformation Potal Hub(GIPH),2020(2022/12 改訂) Lightbox Plus