尾根の上にひっそりとたたずむ 類型:伝説
  鬼石(おにいし) 岩手県一関市大東町
謂われ,特徴,エピソード等

 岩手県一関市大東町鳥海地区に伝わる『鳥海風土記』(明治5年)によれば,この「鬼石」は,「鳥海三名石の一つで,高五丈壱尺(約15m)」と記述されています。

 田原峠近くの尾根の上,標高約630mに存する鬼の角のように見える石群です。

 麓の市之通(いちのかよう)地区では,日が没する位置にあることから「日暮岩(ひぐれいわ)」とも呼ばれています。

 注 鬼死骸伝説に言う鬼石(一関市真柴)とは異なります。

地形・地質の概要

 産総研・地質調査総合センター発行の1/20万シームレス地質図によると,奇岩「鬼石」が立地する場所の地質は,古生代後期デボン紀~ペルム紀(約3.8億年前~約2.8億年前頃)の「変成岩」です。

 低温高圧型の「泥質片岩」で,変成帯としては「緑泥石帯」に相当します。

 泥質片岩は,堆積岩の「泥岩」を源岩とする変成岩です。
 泥岩に含まれていた有機物が変成してできる「石墨:グラファイト」を含むため,光沢のある黒色をしています。

 剥離し易い性質を持っています。 層状に風化や劈開が進む場合が多く,鬼石やその周辺の岩塊にもそのような特徴があるようです(露頭写真での印象)。


鬼石の遠景

鬼石の近景
奇岩近傍の三次元地形イメージ

奇岩「鬼石」が属する「北上高地・南部」は,「隆起準平原」と言われています。
南の浅い海底で生まれた北上高地・南部は,陸地となってから受けた侵食作用,特に最終氷期における「周氷河侵食作用」によって,なだらかな斜面となりました。
この奇岩は,そのような緩斜面の上に,ポツンと残された岩塊と言えるでしょう。 硬いが故の「差別侵食」の結果かもしれません。
周辺の観光地やジオサイト

☆ジオサイト
   鳥海風土記・奇岩牛石(うしいし)立石(たていし)
 猊鼻渓:一関市大東町が源流である砂鉄川が,約2億5千万年前以前の石灰岩を侵食して形成した渓谷です。 約2kmの渓谷には,高さ100mを越す断崖絶壁が存在します。 一年を通して運行される船下りから,断崖を観察すると良いでしょう。
 厳美渓:栗駒山が源流である磐井川が,栗駒火山の噴出物(流紋岩類)を侵食してできた渓谷です。延長は約2kmで,多くの奇岩類や甌穴などが存在します。
 三陸ジオパーク: ジオパークの範囲は,青森県八戸市から岩手県の沿岸を縦断して宮城県気仙沼市までの南北約220㎞,東西約80㎞です。 その海岸線は約300㎞にもおよぶ日本一広大なジオパークです。本奇岩が存在する岩手県一関市大東町の東隣は,同県陸前高田市や宮城県気仙沼市となっており,三陸ジオパークの南部エリアに該当します。

☆観光地
 毛越寺:嘉祥3年(850)慈覚大師円仁が開山し,奥州藤原氏二代基衡公と三代秀衡公の世に隆盛を見た天台宗のお寺です。「もうつうじ」と読みます。 大泉が池を中心とする浄土庭園が名所となっています。
 中尊寺:金色堂で有名な平泉中尊寺の寺伝では,慈覚大師円仁が開山し,奥州藤原氏初代の清衡公が開基したとされています。 天台宗の東北本山で,金色堂を初めとする3000余の国宝・重文伝わっているそうです。

交通概要(公開時の情報)
  • 鉄 道: JR東日本の大船渡線の摺沢駅下車。 一ノ関市営バス大東線の市之通(いちのかよ)行きに乗車し,約30分の終点で下車します。
       鳥海川に沿う県道262を田原峠まで徒歩約1時間です。 以下注のように,運行状況の事前確認をお勧めします。
        注1 一ノ関市営バスの運行は,平日で1日に4往復です。
        注2 奥州市営バスが,江刺バスセンターから下記の江刺田原大平まで,コミュニティバスを1日に3往復運行しています。 ただし,土日休は運休です。
  • 自動車:東北自動車道を水沢ICで降り,国道4号水沢東バイパスを南に進みます。 奥州市惣前町で左折して県道251号に入ります。
       奥州市江刺田原大日で右折して国道456に入り,奥州市江刺田原大平まで進みます。 左折して県道262に入り田原峠を目指します。
引用情報,参考情報,お断りなど

【引用情報】
 ・国土地理院 > 地理院タイル(地形図,5m・10mDEM)  国土地理院利用規約

【参考情報】
 ・産総研・地質調査総合センター発行 > 20万分の1 シームレス地質図

【お断り】
 ・奇岩の地図は「奇岩近傍の三次元地形イメージ」に変更しました。地形図については,地図検索のページをご覧ください。

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