1996年2月 国道229号・豊浜トンネル,岩盤崩落事故
旧豊浜トンネル古平側坑口で発生した岩盤崩落事故の状況

1996年2月10日の朝に発生した「岩盤崩落事故」の後,救出活動を行っている時の状況です。
出典:(公社)地盤工学会,北海道古平町国道229号岩盤崩落調査委員会報告書,1997年7月
現場付近の三次元地形イメージ

崩落事故が発生した「旧豊浜トンネル」は,「チャラツナイ岬」と「蛸穴ノ岬」を迂回するために建設されました。
坑口付近から「セタカムイ岩」にかけての海岸線は,高さ200mを優に超す海食成の断崖絶壁(海食崖)が続いています。
記事など

・北海道の日本海岸は,この崩落現場と同じような断崖絶壁が多く存在し,岩の亀裂に入り込んだ雨水の「凍結融解」により岩壁が脆くなり,
  春先には多くの落石が発生することが知られています。
 しかし,この崩落事故は,2月上旬と言う「厳冬期」に発生したので,凍結した亀裂水が融解することは無いと考えられます。

・厳冬期のため,亀裂を流れて来た地下水の出口が凍結して塞がれたため,地下水の圧力が上昇して亀裂が広がった,あるいは摩擦力が低下した,
 などの諸説が発表されています。代表する論文を,下記に示しました。

・岩盤崩落事故後,事故が発生した豊浜トンネルと隣接するトンネルを統合する形で「現豊浜トンネル」が建設されました。
 岩盤崩落事故で死亡した方々の慰霊碑が,新豊浜トンネルの古平側坑口に建てられています。
 崩落現場に通じる道はありませんので,崩落現場に近づくためには船をチャーターするしかありません。

関連写真

(左)「セタカムイ岩」から崩落事故現場までの海食崖が黒いのは,日影のため地上が写っていないためです(断崖絶壁のすごさがわかります)。
(右)「セタカムイ岩」近くに設けられた,崩落事故での犠牲者を悼む慰霊碑。

左の奇岩が「セタカムイ岩」です。正面の岩壁は,岩盤崩落の現場ではありません。雰囲気だけでも感じてください。

同じ国道229号,旧刀掛覆道上部の岩盤です。 斜面としては,かなり危険であることがわかります。
(左)崖面に平行する亀裂(割れ目)が沢山存在する様子です。 (右)すでに崩壊によって滑り落ちた巨岩です。
刀掛覆道は,隣接する複数のトンネルと一緒に別線の「新雷電トンネル」となって,廃道となりました(ここまでの道はありません)。
参考情報
・川村 信人:豊浜トンネル崩落事故の地質学的背景,自然災害研究協議会 北海道地区部会,センター報告 号外,
        1996年北海道古平町豊浜トンネル坑口斜面崩壊と災害に関する研究調査,pp.11-19.,1997年3月
・菊地 宏吉・水戸 義忠:国道229号線豊浜 トンネル上部斜面の岩盤崩落メカニズムに関する地質工学的考察
        応用地質,第39巻,第5号,pp.456-470.,1998
・北海道古平町国道229号岩盤崩落調査委員会,(公社)地盤工学会,北海道古平町国道229号岩盤崩落調査委員会報告書,1997年7月