中央アルプス駒ケ岳一帯を起源とする7つの石 類型:自然
  七名石(ななめいせき) 長野県駒ヶ根市
奇岩の写真

切石

重ね石

地蔵石

(左奥)地蔵石           (右手前)袋石

袋石

小袋石

蛇石(頭が左)

ござ石
いわれ,特徴,エピソード等

 駒ヶ根高原の七名石は切石,重ね石,地蔵石,袋石,小袋石,蛇石,ござ石のことで,駒ヶ根市の市指定文化財のうち市特別名勝になっています。
 中央アルプス駒ケ岳一帯を起源とする七つの岩石です。

切 石
 刃物で切ったように縦に2つに割れていて,大きさは2つ併せて長径10.4m,短径7.4m高さ3.1mある木曽駒花崗岩の岩石です。
 花崗岩は規則正しい割れ目ができる性質があり,岩石の形成過程で割れたと考えられていますが,坂上田村麻呂が奥州征伐の途中に立ち寄り石を切った伝説や武蔵坊弁慶が試し切りをした伝説が残されています。

重ね石
 横に切ったように割れた石が重なり,その重なり目に松が生えた木曽駒花崗岩の岩石で,長径5.8m,短径4.5m,高さ4.3mあります。
 表面にぼこぼこしたあばた状の結晶があるため,別名を疱瘡石とも言い,疱瘡にかかった人が治癒を願ってお参りに来たそうです。
 また,石の形が蚕の繭に似ていることから蚕玉石とも呼ばれ,戦前は駒ヶ根でも養蚕が盛んであったことから蚕玉祭が盛大に行われていました。

地蔵石
 長径8.3m,短径8.2m,高さ3.6mある伊那川花崗岩の岩石で,巨石の中を穿って子育て地蔵が安置されています。
 言い伝えによると地蔵は石の上に置かれていましたが,子供たちが地蔵を転がして遊んだことが災いしたのか,年熱病がはやり,子供達が次々と亡くなってしまいました。
 そこで,明和8年に西安という行者が悪病退散の祈願をこめて巨石を穿ち,地蔵を安置したそうです。

袋 石
 長径5.7m,短径5.4m,高さ2.4mの木曽駒花崗岩の円礫で,穀物を入れた袋の形に似ていることから「袋石」と呼ばれています。

小袋石
 長径6.5m,短径5.3m,高さ4.0mの木曽駒花崗岩の円礫で,穀物を入れた袋の形に似ていることから「袋石」と呼ばれています。

蛇 石
 長径9.5m,短径2.6m,高さ1.7mの木曽駒花崗岩の細長い円礫で,蛇が地中から頭を出したような形から「蛇石」と呼ばれています。

ござ石
 長径4.6m,短径2.7m,高さ1.9mの黒雲母片麻岩の亜角礫で,表面が平らでござの目に似た筋がついているため「ござ石」と呼ばれています。

地形・地質の概要

 中央アルプス駒ヶ岳の千畳敷付近の山体をつくっていた岩盤は,およそ9万年前に氷河によって削り取られ,麓のしらび平まで運び出されました。

 その後,約2万年前以降に洪水が頻繁し,土石流によって駒ヶ根高原まで運び出されたと考えられています。

 その後は地域の人々の暮らしに溶け込んで現在に至ります。

 七名石のうち,切石,重ね石,地蔵石,袋石,小袋石,蛇石の6つは木曽駒花崗岩などの「花崗岩」で,中央アルプス駒ヶ岳を起源としています。

 残るござ石は「黒雲母片麻岩」です。
 黒雲母片麻岩帯は駒ケ岳の麓に広がっています。

奇岩近傍の三次元地形イメージ

 「七名石」の全ては,「高位段丘面」~「低位段丘面」の上に分布しています。
 よって,これらの巨石は,現在(完新世)の土石流ではなく,後期更新世の中期から後期(数万年前)の土石流によって運ばれてきたことがわかります。
周辺のジオサイトや観光地

中央アルプス駒ヶ岳
 ロープウェイで標高2611mまで登れることもあり,多くの登山客が訪れます。 麓の駒ヶ根高原には飲食店や宿泊施設が並び,年間100万人の観光客が訪れます

駒ヶ根高原砂防フィールドミュージアム
 今回選定した七名石,土石流の痕跡,砂防施設などを展示物とする青空博物館で,平成21年に開館しました。 多くの観光客が訪れています。
 見学コース:「巨石迷路」~巨石の謎を探る~:七名石コース及びこもれ陽コース

交通概況

☆鉄道
 JR飯田線の「駒ヶ根駅」下車。 伊那バス「しらび平(駒ヶ岳ロープウエイ)」行きに乗車し,「切石」~「駒ヶ池」のいずれかのバス停で下車します。
 乗車時間は約10分です。

☆高速バス
 「駒ヶ根ICバス停」で下車し,徒歩で約20分です。
 上記バスも利用できます。

☆自動車
 中央自動車道「駒ヶ根IC」より約5分です。

引用情報,お断り

【引用情報】
 国土地理院 >
   地理院タイル(地形図,5m・10mDEM)
   国土地理院利用規約

【お断り】
 奇岩の地図は「奇岩近傍の三次元地形イメージ」に変更しました。
 地形図については,地図検索のページをご覧ください。