インド:ラージャスターン州の城塞群
-アンベール宮殿,チットーガー城塞,シティ・パレス,クンバルガル城塞,メヘランガール城塞,ジャイサルメール城塞-
案内地図:ラージャスターン州

代・紀/
年代(十億年)/
Age(Ga)
層序/
主な地層名/
番号/
No.
宮殿・城塞名/
ジュラ紀中期/
Middle Jurassic
0.17~0.16 ジャイサルメール層群/
Jaisalmer Group
砂岩,石灰岩/
sandstone,limestorn
No.6 ジャイサルメール城塞
Jaisalmer Fort
原生代中期/
Middle Proterozoic
0.8~0.7 マラニ火成岩スイート/
Malani Igneous Suite
マラニ流紋岩/
Malani Rhyolites
No.5 メヘランガール城塞
Mehrangarh Fort
原生代後期/
Late Proterozoic
1.7~1.0 ビンディヤン超層群/
Vindhyan Supergroup
頁岩,石灰岩,珪岩/
shale,limestone,quartzite
No.2 チットーガー城塞
Chittorgarh Fort
原生代中期/
Middle Proterozoic
2.0~0.8 北部デリー超層群/
North Delhi Supergroup
頁岩,石灰岩,珪岩/
shale,limestone,quartzite
No.1 アンベール宮殿/
Amber Palace
原生代中期/
Middle Proterozoic
2.0~0.8 南部デリー超層群/
South Delhi Supergroup
頁岩,石灰岩,珪岩/
shale,limestone,quartzite
No.4 クンバルガル城塞
Kumbhalgarh Fort
原生代前期/
Early Proterozoic
2.5~2.0 アラバリ超層群/
Aravalli Supergroup
千枚岩,頁岩,珪岩/
phyllite,shale,quartzite
No.3 ウダイプール,シティ・パレス
Udaipur City Palace
No.1 アンベール宮殿(Amber Palace)

【投稿者:中田 文雄(事務局)】

  • ジャイプールの北に位置する「アンベール宮殿」は,小高い尾根の上に建てられています。 このあたりの地質は,北部デリー超層群という,石灰岩,珪岩,砂岩,頁岩などの堆積岩が基本ですが,インド亜大陸の隆起に伴う褶曲活動により,亀裂・砕片化しています。
  • 公開情報の中には,「アラバリ超層群(Aravalli Supergroup)」と表記している地質図も散見されますが,KANO Takashi et al.(2000)に準じ,北部デリー超層群としました。

【参考情報】


「アンベール宮殿」は,ジャイプールの市街地から小さな峠を越した「Amer」というところにあります。
この付近の「北部デリー超層群」は,ほぼ南北に延びる尾根状の構造をしていて,宮殿はそのほぼ中央部に位置しています。

宮殿は,王族の執務所兼住居となっていて,守備は周辺に張り巡らせた「城壁」と「城塞:砦」が担っていたようです。
ここは,最も規模の大きな砦である「Jaigarh Fort」で,宮殿の背後(西側)にある尾根上に建てられています。
①に示す岩盤の表面は,鏡のように磨かれています。 原因としては,断層性の「鏡肌」などが考えられます。
②は,「崖錐堆積物」ですが,谷底まで埋まっていることがわかります。。

正面の尾根状の建築物は「監視所」で,左側に延びる尾根の上には城壁が設置されており,上の写真にある「Jaigarh Fort」の延びています。
No.2 チットーガー城塞(Chittorgarh Fort)

【投稿者:中田 文雄(事務局)】

  • チット―ガー市中心部の東に位置するチット―ガー「城塞」は,南北が約5kmで東西が約0.8kmという,細長い舟形をした台地の上に築かれています。標高差は約150mあるため,地形用語では「メサ」に該当すると思われます。
  • メサ状になっている,ということは,硬岩のために侵食に耐えて残った,いわゆる「残丘」ということになるのでしょうか。
  • 地質は,「ビンディヤン超層群」で,具体的な種類は「頁岩」,「砂岩」や「石灰岩」などです。
  • ビンディヤン超層群の北部には,1億年以上も古い「アラバリ超層群(Aravalli Supergroup)」が分布し,南東側にはデカン高原を形成する玄武岩の台地(Deccan Traps)が広がっています。

【参考情報】


西の麓から延びている,車で唯一上れる道路から,南の方角を撮影しました。
台地の縁には敵の侵入を防ぐための城壁が築かれていますが,注目すべきは頂上直下の岩の壁です。
中腹に白い岩が見えていますが,恐らく「落石」でしょう。

垂直に切れ込んでいる少し手前まで石が積んであって,防御陣に漏れがないようにした跡が残っています。
台地を構成する岩は,「頁岩」か「石灰岩」のように見えますが,水平亀裂が複数存在するので,それほど堅牢ではなさそうです。

(上)「Maharani Shri Padmini Palace」という,たいへん美人のお妃を住まわせていたという小さな宮殿です。 篭の鳥ですね。
(下)その池の周囲です。 地層に緩い傾斜が付いていますが,「石灰岩」か「珪岩」のようです。 後者の場合は「チャート」かもしれません。
No.3 ウダイプール,シティ・パレス(Udaipur City Palace)

【投稿者:中田 文雄(事務局)】

  • ウダイプールの中心部の地質は,アラバリ超層群でも最も新しい地層で,盆地の中心部あたりに分布しているものと考えます。
  • 具体的な地層名は「千枚岩」や「粘板岩」で,所々「珪岩」や「ドロマイト(苦灰石)」を混在するようです。
  • 「City Palace」は,「ピコラ湖(Lake Pichola)」の東の湖畔の小高い丘に建てられているため,極めて眺望の良い場所です。
  • 春と秋には,湖の向こう側に陽が没むでしょう(未確認)

【参考情報】


「ピコラ湖(Lake Pichola)」からの「City Palace(左側の建物群)」です。 右側は現在ホテルですが,当時はもちろん宮殿でした。
向かって右側が土地の高さが低く,左端が小高い丘となっていて,最も高いところに玉座があった,とガイド氏から聞いた記憶があります。

「City Palace」の最上階から,湖と反対側の南方を撮影しました。 尾根の最も高い場所には「Karni Mata View Point」があります。
View Point の方が標高が高いことから,この「City Palace」は本当に宮殿であって,城塞としての機能がほぼ無かったことがわかります。

避暑地として使われたと言う「Sajjangarh Monsoon Palace」です。 標高約850mの尾根の突端に建てられていて,涼しかったろうと思います。
KANO Takashi et al.(1999では,地質は「珪岩」と「石英千枚岩」なのですが,褶曲のせいでしょうか,随分と破砕されているように見えます。
No.4 クンバルガル城塞(Kumbhalgarh Fort)

【投稿者:中田 文雄(事務局)】

  • 「クンバルガル城塞(Kumbhalgarh Fort)」は,アラバリ山地の真ん中に築かれた完璧な「山城」です。 正に山奥で,周囲には大きな町がありません。
  • 最大の特徴は,36kmにも及ぶ長大な城壁です(右図参照)。
  • アラバリ山中なのですが,地質は「アラバリ超層群」よりもかなり若い「南部デリー超層群(South Delhi Supergroup)」による「南デリー褶曲帯(South Delhi Fold Belt)」に属しています。 地層は,「珪岩」,「苦灰質石灰岩」や「頁岩」などですが,褶曲により変成岩化している場所もあると思われます。

【参考情報】


「クンバルガル城塞(Kumbhalgarh Fort)」の「本丸」です。
長大な城壁で囲まれた城域の南西端に位置していますが,独立峰的に急傾斜の斜面に囲まれており,更そこには幾重もの城壁と門が設置されていました。
守りに易かったと想像できますが,水はどうしたのでしょうね。 人工のダムが建設されていたので,そこから人力で運び上げたのでしょうか。

本丸への途中です。 左右とも同じ露頭の写真です。
「南デリー褶曲帯」と名付けられているだけあって,地層は見事に曲がっており,特に,右側には「地層が折れ曲がっている」状況がよく見て取れます。

本丸の屋上から,南の進入路を撮影しました。 写真の中央部,道路の左側に「城壁」が写っています。
いずれにしても,このお城は完璧な「山城」であったことが見て取れます。
No.5 メヘランガール城塞(Mehrangarh Fort)

【投稿者:中田 文雄(事務局)】

  • ジョードプル(Jodhpur)市街地とその北部一帯には,ジョードプル層群(Jodhpur Group)を構成する「ソニア砂岩(Sonia Sandstone)」が分布しており,市街地の西側と南側は「基板岩」である「マラニ火成岩スイート」と名付けられた火成岩(流紋岩など)が広く分布しています。
  • 両者は不整合ですが,市街地にその境界が存在します。
  • 「メヘランガール城塞(Mehrangarh Fort)」は,基板岩である「マラニ流紋岩(Malani Rhyolites)」による「メサ状台地」の上に建設されました。
  • いずれの地層とも,標高の低い部分は「タール砂漠」など,砂漠(砂丘)が地層を覆っているため,露頭を見つけにくくなっているようです

【参考情報】


城に向かう道路上に設置されている「View Point」からの眺めです。 地質図によると,城の土台の部分だけが7億年より古い時代の「流紋岩類」とのことです。
流紋岩の必要な部分だけを垂直に切断してありますが,台地の頂上部分を水平に均すこと無く,凸凹に合わせた石積みを行って,城塞は建築されています。

城塞基礎の一番上からの南側です。 尾根の上に城壁が建設されていますが,これらの部分は流紋岩では無く「ソニア砂岩」のようです。

(左)円筒形の部分は,どうやら上物を支える基礎(円柱)のようです。 右端にある塀の部分が,城塞基礎の一番上になります。
(右)城に向かう途中にある「View Point」の,道路反対側にある「ソニア砂岩」の法面です。 切っただけで,防護工は一切施工されていませんでした。
No.6 ジャイサルメール城塞(Jaisalmer Fort)

【投稿者:中田 文雄(事務局)】

  • インド西部からパキスタン東部にかけて広がっている,インド最大の「タール砂漠」のやや東側に「ジャイサルメール」という,古くから交易で栄えたオアシスがあります。
  • それは,砂丘から顔を出している小高い丘があったからでしょう。
  • 下記資料を参照すると,小高い丘は,ジュラ紀中期の「砂岩(sandstone)」と「石灰岩(limestone)」などでできていると考えられます(露頭調査はしていません)。

【参考情報】


ジャイサルメール町の中心部にある「パトウォン・キ・ハーベリ(コーターリー・パトワー邸)」の屋上から眺めた「ジャイサルメール城塞」です。 ほぼ南の方角です。
城塞が建設された丘は,砂漠からの高さがせいぜい20mとそれ程高くはありません。 そのため,10m以上の城壁が建設されたのでしょう。

城塞建物の中段から北の方角を撮影しました。 浅い谷を隔てて,北にも「ジャイサルメール層群」と思われる小高い丘が続いています。
バイクが通っている道は,城塞へ入るためのただ一つの進入路です。
バイクの向こうには城門が設置されていますが,その手前の屋根に置かれている多数の丸い玉は,砂岩で作られた「砲弾」とのことです。

土留壁も,ブロックを積み上げた城壁もすべて,付近で採取された「砂岩」です。
右は,上の写真に写っているライトをつけたバイクの場所付近からの撮影で, 最後の城門をくぐる直前の状況です。
【事務局による参考情報など】

【お断り】

  • 本ページは,旧GUPIのウェブサイト「世界の地質案内」の管理運営を引き継いだ「GIPH事務局」が作成した「新規ページ」です。