富山県:立山の氷河地形(御前谷氷河,内蔵助谷氷河,山崎カール)
地形の特徴

氷河地形,周氷河性平滑斜面,カール,圏谷,モレーン,U字谷,日本百名山

地形と地質の三次元イメージ :
三次元地形図上でマウスクリックすると「5万分の1 地質図幅『立山』(出典,下記)」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。

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  • 立山(雄山・大汝山・富士ノ折立)の主稜は,中生代・ジュラ紀,船津花崗岩類に属する「大熊山花崗閃緑岩類(D)」で,その周囲は同年代の「毛勝山花崗岩(Gkc)」が広く分布しています。 解説書によると,この石英閃緑岩は,毛勝山花崗岩の上位層ではなく,「捕獲岩」とのことです。
  • どちらもマグマが地中深くで,ゆっくりと冷えて固まった深成岩です。
      閃緑岩は,中性で,花崗岩よりは細粒の長石や黒色斜長石などから構成されています。
      花崗岩は,酸性で,石英や長石,黒雲母などから構成されています。
  • 前期のように主稜を構成しているのは閃緑岩なので,周囲の花崗岩よりも風化や侵食には強いのかもしれません。
  • 「飯田,2020」によると,立山には「御前谷」と「内蔵助谷」と言う,いずれも東斜面にあるカール(圏谷)の最上部に存在しています。
  • 一方,西斜面には,天然記念物となっている「山崎カール」が存在しますが,雪渓の流動性が確認できないので,現存氷河とは認められてはいません。 過去の遺物なのでしょう。
  • 西斜面には,小さな谷や凹凸の少ない比較的平滑な場所があります。 これは,記事欄に詳述する「周氷河作用」によるものでしょう。
地形と地質の三次元イメージ : 御前沢氷河,内蔵助谷氷河
  • 立山に現存する氷河は,東斜面にある「御前沢氷河(E)」と「内蔵助谷氷河(F)」の二つです。
  • 御前沢氷河の分布域は,標高2,500mから2,800mで,内蔵助谷氷河は標高2,700mから2,830mです。
  • いずれも,谷の上部にある「遷急点」より上なので,谷全体が氷河と言うことではありません。
  • 内蔵助谷氷河の場合は,以下の地形断面図でもわかるように,幅広のお皿のような地形をしているので,地球温暖化により早晩消滅してしまうでしょう。
  • なお,国土地理院の命名では「御前谷」となっていますが,「飯田(2020)」では「御前沢氷河」となっています。
【地形断面図】 御前沢氷河,内蔵助谷氷河

資料を基にして,「氷河」と想定される場所の「地形断面図」を作成しました。
いずれの谷も,「U字谷(カール=圏谷)」に分類してよいと思われます。
【現場写真】 内蔵助谷氷河
  • 「内蔵助カール」と「内蔵助氷河」です。 撮影したのは1981年8月で,当時は「氷河か否か」という議論の真っ只中でした。
  • (上)弾性波を使用して,氷の厚さを測定いる途中の写真です(休憩中)。 外国産の探査器でしたが,性能が悪く殆ど成果は得られませんでした。
  • (下)上の撮影場所から「内蔵助カール」の下流方向です。 氷河は「遷急点」あたりまでなので,写真に写っている範囲だけです。
地形の三次元イメージ : 山崎カール
  • 「立山」に「カール(圏谷)」がある,と初めて認められたのが,発見者にちなんで付けられた「山崎カール」です。
  • ただ,規模が小さいこと,標高が比較的低いこと,などで,残念ながら「氷河」は存在しません。「モレーン」が残るのみです。
  • 最終氷期においては,短くとも立派な氷河が存在したことでしょう。
【現場写真】
  • 「ミクリガ池」の北側にある「エンマ台」からの「山崎カール」です。
  • 撮影した時期は10月中旬です。 山崎カールを含む立山の西斜面では,「雪渓」はすべて溶けてしまって残っていませんでした。
  • なお,「立山」とは「雄山」,「大汝山」と「富士の折立」の三座の総称です。
立山(雄山)

この登山ルートは,現在の一般ルートを示しており,深田久弥の登山ルートとは異なります。
  • 深田久弥が登頂に利用したルートは,わかっていません。 このため,室堂を登山口とする最も一般的なルートをトレースしてみました。
  • 地形図上の標高差は559mです。 このルートには余りアップダウンが無いので,実際の登りは約580mとなり,歩行距離も約2.8kmです。
  • 健脚者ならば,2時間程度で雄山の山頂に登ることができるでしょう。
【記事・引用情報と参考情報】

【記事】

  • 現存する日本の氷河は,以下の7箇所です(飯田,2020)。
    三ノ窓氷河 (剱岳), 小窓氷河 (剱岳), 池ノ谷氷河 (剱岳),御前沢氷河(立山),内蔵助谷氷河(立山),カクネ里氷河 (鹿島槍ヶ岳),唐松沢氷河 (唐松岳)
  • 山稜の西側斜面(周氷河作用): 氷期から現在まで,冬季に吹き付ける西風により,西側の斜面では雪が吹き飛ばされて積もりません。
    岩盤中の水が凍結・膨張することで岩屑化し,風の力も借りて移動するので,斜面は傾斜があるものの凸凹は平均化され「周氷河性平滑斜面」となります。
  • 山稜の東側斜面(氷食・雪食): 季節風の吹き溜まりとなって積雪が多くなります。
    過去の氷期においては,雪が凍ってできた氷河(状)の氷が下方に移動することによる氷食と運搬によって,斜面は急傾斜化しました。
    現在は,積雪のために凍結融解による周氷河作用は起きにくい代わりに,(雪田の)融雪水による侵食のほか,雪崩による侵食も考えられます。
  • アバランチ・シュート:「雪崩路」とも言う樋状の凹地形です。雪崩路の岩肌は,雪崩によってやすりをかけられたような「鏡面」状になります。
    ただし,雪崩は30~50ºの傾斜面でよく発生しますが,どの斜面でも発生するわけではありません

【引用情報】

【参考情報】

【お断り】