特殊地下壕とその崩壊について(その1)
地下壕の崩壊(その1) 地下壕の崩壊(その2) 地下壕の内部状況 地下壕の対策工事  
1. 特殊地下壕が崩壊する過程(想像図)

特殊地下壕など,浅所空洞が崩壊する現象の想像図で,(一社)充填技術協会の資料 を参考に作成しました。
第一段階の例[天盤や坑壁に緩みや亀裂が発生し,部分的な崩落が始まる]
Photo 1
シラスを掘削して作られた軍用の特殊地下壕
  • 左は,「シラス」を掘削して作られた, 規模の極めて大きな「軍用地下壕」です。
  • (左)で,茶色く変色している部分は地表から浸透してきた水によるもので,劣化がある程度進行しいる状態であると想定されます。
  • (右)は,地下壕の天盤の劣化がかなり進行しアーチ型に崩壊しました。
    写真中央下の土盛りは,天盤から崩壊して堆積したシラスです。
  • 崩壊している天盤と左右の側壁は茶色く変色しており,地表からの地下水がかなり多量に浸透していると考えられます。
Photo 2
砂岩を掘削して作られた軍用の特殊地下壕
  • 左は,「砂岩層」を掘削して作られた「軍用地下壕」です。
  • 技術者の真上に見えている色の濃い部分が,地下水が染み出している場所で,ここから天盤の崩落が開始されたのでは,と考えました。
  • これらの地下壕をこのまま放置した場合,将来的には天盤の崩落が地表に達する恐れがありますが,その時期は地下壕上部の「土被りの厚さ」に左右されます。
  • 仮に,土被り厚さが数メートルならば数年後には陥没するかも知れませんが,数十メートルであれば100年程度は大丈夫かも知れません。
  • 正確に診断するためには,天盤の厚さと強さ(地耐力),地表水が浸透する程度などを正しく調査して,地盤を正しく評価する必要があります。
第二段階の例[天盤や坑壁に緩みや亀裂が発達し,崩壊が拡大する]
Photo 3
シラスを掘削して作られた民間の避難壕
  • 左は,「シラス」を掘削して作られた民間の「避難用地下壕」です。
  • 地下壕が交差している部分がちょうど部屋のようになっており,断面積が増えたことが天盤崩壊の原因と思われます。
  • 天井部分が写っていないので断言は出来ませんが,恐らく「ドーム状」になっているものと思われます。
  • 堆積したシラスの上にクイのようなものが突き刺さっています。
    地表に突き刺したものが落下した可能性があります。
  • なお,右奥の地下壕に写っているパイプは,ボーリングの保護管です。
Photo 4
砂岩・泥岩を掘削して作られた軍用の特殊地下壕
  • 左は,「砂岩・泥岩層」を掘削して作られた「軍用地下壕」です。
  • 地下壕の内部に地下水が溜っていますが,天盤の崩壊との関係はわかりません。
  • ドーム状になっている天盤には,小さな「鍾乳石」が沢山ありますが,これは砂岩層の中に含まれている石灰分が溶け出して固まったものです。
  • 鍾乳石があるほどなので,天盤の崩落は最近発生したものではありませんが,将来にわたって安定しているとは言い切れません。
Photo 5
安山岩質角礫凝灰岩を掘削して作られた軍用地下壕
Photo 5
左の拡大画像(崩落は下層のみで上層は崩落していない)
Photo 5
天盤崩落のイメージ
  • 上の画像2枚は,「安山岩質火砕岩(角礫凝灰岩)」を掘削して作られた,直径が2mを超す巨大な「軍用地下壕」です。
  • 地下壕の天盤がドーム状崩落,いわゆる「抜けあがり」を起こしましたが,上の地層との境界で止まっています。
    その状況の想像図(イメージ)を左図に示しました。
    「キャップロック型地すべり」に似た現象が起こっていたようです。
  • 崩落した岩石や天井となっている岩盤の色が濃く変色しているため,崩落はかなり前に止まっているものと考えましたが,将来的なことはわかりません。
Photo 6
砂岩層を掘削して作られた軍用の特殊地下壕
  • 左は,「砂岩層」を掘削して作られた,直径が1.8m程度はあろうかと言う「軍用地下壕」です。
  • 民間の山に掘削されましたが,長らく所在が不明でした。その後,土地を造成したところ異変が起きたことで,地下壕の存在がわかりました。
  • 写真を撮影した場所の前方数メートルの所で,全面的に崩壊しています。
  • 崩壊した場所は,造成によって土被りが薄くなった場所に一致しました。
    造成工事により,地下壕上部の環境が変わり,天盤を支えられなくなったものと思われます。
Photo 7
安山岩を掘削して作られた軍用地下壕
  • 左は,「新第三紀末頃の安山岩・火砕岩」を掘削して作られた「軍用地下壕」で,同じ坑道の左右の壁が写っています。
  • この地下壕は,地下水の壕内への侵入が常態化していました。
    満水にはならなかったとは思われますが,側壁の下部は水に浸かっていたことがわかっています。
  • 側壁の崩壊は,水に浸かることが多かった下部から始まり,支えを失った上部も剥がれるように落下したのです。
Photo 8
シラスを掘削して作られた軍用地下壕
  • 左は,「シラス」を掘削して作られた「軍用地下壕」です。
  • この壕の特徴は,「薄皮を剥がすような崩壊」です。
    残念ながら,原因はわからずじまいでした。
Photo 9
シラスを掘削して作られた軍用地下壕
  • 左は,「シラス」を掘削して作られた「軍用地下壕」です。
  • (上)では,水による侵食のためでしょうか,側壁の下部が欠けています。
  • 支えが無くなればその上の壁が剥がれるのは自明の理で,(下)ように,壁の崩壊が連続していました。
第三段階の例[天盤の崩落が地上にまで達し,地盤が陥没する]
Photo 11
安山岩質の地層を掘削して作られた地下壕
(下左)は,地下壕の坑口。(下右)は地下壕の内部で,水が溜っている。