県庁壕(しっぽうじぬガマ)(No.38)那覇市真地(識名霊園)
概略位置図

マーカーは,坑口の概略位置を示しています
現場写真 : 県庁壕(しっぽうじぬガマ);坑口A

県庁壕(しっぽうじぬガマ)の入口。 以前は誰でもお参りができましたが,現在では柵・施錠付きになりました。

地下壕に入るとすぐ目に付く「大石柱」。 手前には拝壇が置かれています。 この写真は,四枚繋ぎのパノラマです。
左向き矢印の先は,戦時中に人工的に掘削した地下壕が延びています。
また,右側の一段低いところの奥に「四方地・・・(後述)」の碑があります。
画像をクリックすると拡大します。 撮影:2013年1月。

正面の石柱の背後にある大空洞。 空洞の中央にも石柱があり,拝壇が置かれています。 撮影:2013年1月。

坑口の右下奥に祀られている御嶽(うたき)。 「四方地地根母君神がなし」と読めます。「しっぽうじぬガマ」の由来です。
ペットボトルが置き去られていました。 撮影:2013年1月。

戦争のために人工的に掘削した部分です。 撮影:2008年3月。
天盤は琉球石灰岩ですが,壁の下半分と床は「クチャ」と呼ばれる泥岩なので,掘りやすかったのでしょう。

(左)上の写真の突き当りです。 井戸が掘られています。 その手前も,天盤から崩落した岩石が堆積しています。
(右)壕内の最奥部では,天盤が剥がれ落ちています。 このまま見学壕としては利用できません。 撮影:2013年1月。
現場写真 : 県庁壕(しっぽうじぬガマ);坑口B

裏口(B)の案内板です(矢印の先が坑口)。 随分ゴミが投げ込まれています。
閉鎖前の2008年に,壕の中からこの近くまで来たので,8年振りです。 撮影:2016年4月。

坑口(B)近くの内部です。 大量のゴミが投げ込まれていました。 2016年に地上から確認しました。 撮影:2008年3月。
記事
  • 閉鎖中で,許可の無い場合は立ち入りはできません。
  • この壕は永らく出入り自由のようでしたが,編者が入壕した2013年3月以後,柵が設置され施錠されてしまいました。
    鹿児島県の地下壕の中ででたき火をした中学生3名が一酸化中毒(酸欠?)死亡した事件を契機として,政府が打ち出した「地下壕は原則立ち入り禁止」という方針に沿った安全対策上のことと思います。
    しかし,新聞報道によると「誰かが壕内の一部を壊した。」とのことなので,こちらの方が理由としては大きかったのかと思われます。
  • 那覇市内には,豊見城市との境界にある海軍司令部壕の他には,管理された地下壕やガマはありません。
    修学旅行生を対象とする地下壕というと,糸数壕など平和祈念公園に近いところにも数多く存在し,玉砕寸前と言う時期的な経緯もあって,多くの学生は南部戦跡に行くものと思います。
    しかし,那覇市内にも県庁壕のような戦争遺跡が存在するわけですから,今後自由な入壕は出来なくても,安易に埋め戻すようなことはせず,後世に残して貰いたいものです。
  • 2016年4月に再訪しました。 今回の成果は裏口(坑口B)を見つけたことです。 ゴミが投げ込まれており,その点では無残です。
    多くの人が亡くなっているはずなのに。
  • 2018年5月に再々訪しました。 壕の周囲には,石灰岩地帯特有のドリーネが点在しています。
    記録では「複数の入口があった」と記載されているので,これらのドリーネのどれかに坑口が設けられていたことでしょう。
    壕内の正確な測量図面があれば,判明することではあります。
引用文献[1フィート運動の会 活動報告]

調査日(調査番号):1992年10月18日,1993年2月28日(No.38)

  • 様 子 : 全長約130メートル。 入口2箇所の内1箇所落盤。 自然洞窟を一部構築(約50メートル)。
           シンメーナービ(大なべ)用のカマド2ヵ所,普通サイズのカマド3ヵ所。 水が満杯の井戸。 火炎放射の跡。
  • 形 態 : 自然壕・構築
  • 使用者 : 民間・警察・県庁
  • 遺 品 : 火炎放射で変形したビールビン,炭化した石鹸やカンパン,石灰水で石のように固まったビールビンや缶詰の空き缶
  • 土 質 : 琉球石灰岩,クチャ(編者)
引用情報・関連情報

引用情報

関連情報

  1. 「シッポウジヌガマ(県庁壕)」,沖縄の戦跡ブック『ガマ』,p.64,沖縄県高教組教育資料センター編集,2009年,ISBN978-4-903042-16-9
  2. 「県庁壕」,沖縄の戦争遺跡,p.32,沖縄県平和祈念資料館編集,2007年,ISBN978-4-903042-14-5
  3. 沖縄タイムス: 県庁壕壊される 文化財目指す那覇市憤慨:
      那覇市が市文化財指定を目指す県庁・警察部壕(ごう)=同市真地=の一部で壁や床などが壊されていることが29日、分かった。・・・・・・。
  4. 県庁・警察部壕「しっぽうじぬがま」:
     昨夜「沖縄の島守」を読み、記事を投稿した後なかなか寝付けず、朝になってしまったので、作品の現場となった県庁・警察部壕へ出かけました。
  5. 「f.シッポウジヌガマ 」,沖縄県戦争遺跡詳細分布調査(Ⅳ),沖縄県立埋蔵文化財センター調査報告書第5集,p.51.,2004
  6. 那覇市立教育研究所の公開資料(真和志地区 No.17)