風景をチェックする ―地図と車窓から―
風景をチェックする ―地図と車窓から― 出典 : 風景あるくの記 pp.**-**.

 移り変わる車窓の風景も,地点がわからないと興味もすくなくなってしまう。 もしも地点がわかっており,ある程度ものを見る能力のある人ならば十分地理を勉強したことと同じ結果になるといっても云いすぎではない。

「あの山は何の山,ここはA部落で街道集落,部落を取り巻く耕地は二毛作,この川はB川,A部落はこの川の段丘の上にあった。 川は自然堤防の中を流れている。 対岸はC部落,もう一つ向こうにD部落,それにE丘陵が見える。 一面の茶畑と変わった。 あそこに茶を集積するN町が見える。 倉庫が見えてきた。 N町にやってきた。 この地方の一つの中心地であるこの町にはP町とO町への連絡バスがあり,トラックが何台もきて貨車の荷を乗せてゆく。 トラックの横腹に書かれたものはO町にある会社名だ。 すると茶をはじめ,その他の物資は地方からN町に集積し,ここを基点としてP町,O町その他へ運ばれてゆく・・・・など。」 -中略-

 さてこの車窓の風景がわかるためには,二万五千分の一や五万分の一の地図があればよい。 読み方や見方はそれぞれの章で十分やったから,その実力を試してみるのも面白い。

 もう一つ二十万分の一があれば完璧だ。 二十万は編集図で実測図ではない。 等高線は五万分の一を基にして描かれている。 それに多色刷りだから色もきれいだし,山地は陰影をつけてあるから,誰にでも浮き上がって見える。 それに収めてある範囲が広いから汽車やドライブにも好適の地図といえる。 遠くの方は二十万分の一で,近くは五万分の一を見ると空間的関係がよく頭に入ってくる。 -後略-

注 現在では「禁忌」となっている用語が使われていますが,作者が死亡していることもあって,原文のままとしました。

Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 風前の灯!,函館本線の車窓(昆布駅➡ニセコ駅)

JR北海道・函館本線 長万部発下り倶知安駅行きの各停列車に乗車し,昆布駅 ➡ ニセコ駅間,左側の窓越しの風景。
写真に写っている左右の民家は,最新のGoogle Street View にも写っていました。

(左) 函館本線とニセコ連峰。    (右)線路から見たと仮定した三次元地形図。 遠景はOKですが近景は若干違和感があります。
  • 現在,函館~札幌間の特急は全て室蘭本線を経由し,函館本線の「長万部~小樽間」は特別の列車以外全て各駅停車で運行されています。
  • 更に,この長万部~小樽間は,北海道新幹線の全面開業によって,確実に廃線になると思われます。
  • 後10年もすると,この車窓を見ることは永遠に無くなるのでしょうね。
  • ニセコアンヌプリの南側の麓には「火山麓扇状地」が広がっていますが,車窓からの写真では手前の丘が邪魔をしていて見えませんでした。
Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 大津波で風景が一変する前の様子。 旧国鉄山田線,浪板海岸駅付近

旧国鉄・山田線 宮古駅行きの各駅停車が浪板海岸駅を発車してすぐ,右窓越しの風景です。

(左)現三陸鉄道リアス線,旧国鉄山田線と吉里吉里半島。 (右)線路から見たと仮定した三次元地形図。 ほぼほぼ正解かと思います。
  • 旧国鉄山田線は,盛岡駅から宮古駅を経由して釜石駅までを結んでいました。
  • 東日本大震災による大津波により線路が破壊され,宮古駅~釜石駅間は不通となりました。
  • 復旧に当たっては,様々な紆余曲折があり,結局,第三セクターの三陸鉄道が宮古駅~釜石駅の営業を引き受けることになったのです。
  • 普段の船越湾は波が静かで,対岸の吉里吉里半島とその先っぽにある野島や松島を眺めることができます。
Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : まだ狭軌であった頃の車窓。 旧国鉄 奥羽本線和田駅付近

秋田新幹線が開通する前の奥羽本線,大曲駅~秋田駅間は「狭軌」でした。
この車窓風景は,奥羽本線上り特急「つばさ2号」山形経由上野行きの左側で,
和田駅を通過してすぐにわたる岩見川橋梁の少し手前ではないかと思います。
秋田新幹線の「こまち」も同じところを走っているので,晴れていれば同じ風景を眺められるでしょう。

(左)旧国鉄奥羽本線の岩見川橋梁のあたり。   (右)線路から見たと仮定した三次元地形図。 ほぼほぼ正解かと思います。
  • 秋田駅を出た奥羽本線の旧特急列車は,大曲駅から田沢湖の方には行かなくて,横手駅から県境を越えて新庄駅,山形駅と米沢駅を経由して,福島駅で東北本線に合流していました。
  • 現在,秋田発の新幹線は全て角館駅や田沢湖駅の方を経由するので,大曲~新庄間は各駅停車しか走っていません。
  • 10年ほど前,新庄発奥羽本線経由秋田行きの各駅停車(狭軌車両)に載り通しました。
    大曲からの下りでは,日本では珍しい「三線軌条」を走るところもあり,また時折新幹線車両のこまちとすれ違うなど,マニア垂涎の路線です。
Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 様々な窓風景

東海道新幹線下り,三島駅を過ぎて手前の視界を遮る愛鷹山を抜けた瞬間に飛び込んでくる富士山の風景です。
注 Kashmir3Dによる三次元地形図では,標高:水平の比は2:1になっています。 以下同様です。 詳しくはこちらをどうぞ

北陸新幹線下り,黒部宇奈月温泉駅~富山駅間の,上市川の鉄橋を過ぎたあたりは,剱岳を望む絶好の風景です。
山々の手前には,上市川がかつて作り,現在は河成段丘面となっている古扇状地が広がっています。 詳しくはこちらをどうぞ

旧国鉄 大隅線(志布志駅~国分駅)の「旧大隅辺田駅」と「大隅二川駅」間のやや二川駅寄りの場所で撮影した記憶があります。
大隅線の辺田駅付近は1972年にやっと開業しましたが,なんと僅か15年後の1987年に廃止となってしまいました。 詳しくはこちらをどうぞ

新千歳空港や旭川空港を離陸して羽田空港に向かう飛行機は,運が良いとこのように右窓ほぼ直下に「岩手山」を望むことができます。
岩手山は「南部片富士」とも呼ばれているように,成層火山ながら複雑な容姿をしています。 詳しくはこちらをどうぞ

四国,九州や沖縄あたりから羽田空港に向かう飛行機が,高度を下げてしばらくたち,
左窓下に「伊豆大島」が見えるころ,右窓のやや遠くに「三宅島」と「御蔵島」を望むことができます。 詳しくはこちらをどうぞ
【引用情報と参考情報】

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