箱根山と宿場町 ―箱根八里は馬で超すのが当り前―
箱根山と宿場町 ―箱根八里は馬で超すのが当り前― 出典 : 風景あるくの記 pp.41-42.

 箱根山の旧東海道の宿場町の運命は,複式火山の中に立地したことから始まった。 もちろん交通路として箱根八里の最短距離を選定しているはずなのだが。 深い須雲(すくも)川のV字谷は何物も寄せ付けぬ厳しさが感じられる。

 それは当たり前で徳川の天下を,西はこの山でささえようというのであるから,軍事的にも,天下の嶮でなくては困る。 だから交通路たるや便利で不便にできている。 天下の嶮がそう簡単に越えられては大変なのだ。 それでも,かっての五十三次の宿場町,須雲川・畑宿(はたのしゅく)は賑わった。  -中略-

 道幅が広いのは宿場と関所の付近くらいなもので,あとはまた狭くなり二人肩を合わせてやっと歩ける程度だ。 何のことはない「露地の細道通りゃんせ」というところ。 とてもじゃないが広重画く五十三次のようなのんびりした街道ではない。 ましてや御駕籠でホイサッサどころの騒ぎではない。 この有様では箱根八里は馬でも超すが・・・,この歌が無くても馬が一番便利ということになる。


空中写真と『風景あるくの記』とは直接関係ありません。
Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 箱根八里(東坂)
三次元古地形図上でマウスクリックすると「最新の地理院タイル(出典,下記)」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。
  • 現在の箱根八里は,「早川」沿いの急傾斜道をひたすら上って「小涌谷」に至り,大きく左折して「蛇骨川」沿いにさらに上って「芦之湯」を経由する「国道1号線」が定番となっています。 正月二日と三日に行われる「箱根マラソン」のルートでもあります。
  • しかし,本来の箱根八里,すなわち「旧東海道」は,早川の支流である「須雲川」沿いに設定されていました。
  • 『風景あるくの記』にも記載されているように,この須雲川沿いのルートの方が小涌谷ルートより短いからでしょう。
    Google Maps では約5km違いました。
【地形断面図 : 天下の嶮】
  • 地形断面図を眺めると,「湯本茶屋」を出たあたりから本格的な上りが始まりますが,1km程で最初の宿場「須雲川宿」に着くので,一息入れることができます。
  • 次の「畑宿」への道は,「1.2kmで120m上る」という急傾斜(約5.7゜)です。 本格的な山登りと,考えてもよさそうです。
  • そして,この畑宿から約4km(1里)の間は,ひたすら傾斜5゜超の上り坂が続きます。 ここが,「箱根の山は 天下の嶮」の核心部なのでしょう。
    須雲川の谷底から離れ,「下二子山」の山裾を巻く上り道なので,展望が効いてくるのがただ一つの慰め,だったように思えます
  • 「元箱根」には,標高約800mという旧東海道の最高点があります。 水平距離約14kmで800mの上りというのは,平均 勾配が約5.7(約3.2゜)となって,中々の上り坂であることは間違いありませんね。
Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 天下の嶮の核心部
  • 標高段彩図を眺める限り「心臓破りの坂」は,「畑宿」からの上り坂でしょう。
  • 「下二子山」の山腹のトラバース道もそろそろ終わりかな,と思わせるあたりには「猿滑り坂」という,あまり聞きたくない名前の坂があります
  • 恐らく,この付近はぬかるんでいて,下りのときに難渋したのでは,と勝手に解釈しています。
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