火山の変貌 ―火を噴く山も姿を変えて―
火山の変貌 ―火を噴く山も姿を変えて― 出典 : 風景あるくの記 pp. 30-31.

 富士山のように秀麗な姿の火山も長い間,風雨にたたかれていると,山頂近くから掘れ溝が発達し,頂上と裾野にのびてゆく,そして大きな沢になり,台風や豪雨の都度,この掘れ溝は深く大きくなってゆく。

 そして削られた容積分の物質を裾野に吐き出して,次第に広い範の裾野が広がり,火山体は素晴らしく大きくそして雄大な見掛けを持つようになる。 さらに年月が経つと,掘れ溝はガレ沢から谷に発達し,低い地域から発達した谷頭が火山の沢に届くと,一層侵食が旺んになり,さしもの雄大な山容は次第に崩れをみせて低下する。 秀麗な姿は鋸の歯のようにわかれ,いくつもの頂上を持つようになってくる。 しかし裾野は依然として広く発達する。

 富士山の南にある愛鷹山の山頂が越前岳・位牌岳・呼子岳・鋸岳・愛鷹山の五つに別れてしまったのも,こうしたプロセスを経ているからである。 つまり侵食の段階が進んでいることになる。 それで兄貴分であるはずの愛鷹山の方が低くなり,その北に麓は弟分の富士山の噴出物を被って隠れている。 

Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 愛鷹山
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  • 「愛鷹山」は,第四紀・チバニアン期(約40万年前)に活動を始め,約10万年前(後期更新世)に活動を終えた古い火山です。
  • 従って,活断層デーベースには掲載されておらず,使われなくなった言葉の「死火山」に該当するかもしれません。
  • 全山ほぼ全てが第四紀 後期更新世に噴出した「安山岩・玄武岩質安山岩」で覆われ,山頂部だけが「デイサイト・流紋岩」の溶岩・火砕岩です。
  • 活動を終えてから相当程度年月が経過しているため,侵食による谷が無数に生じています。
  • 山容の詳しい説明は冒頭の『風景あるくの記』をご覧ください。
Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 主な第四紀火山と現在の山容
火 山 名 活 動 時 期 注 記 事 項
愛鷹火山 約40万年前~約10万年前[第四紀 チバニアン期~後期更新世] 完新世以後,活動歴確認されず 
赤城火山 約50万年前~約22万年前(古期赤城火山),約18万年前~2.9万年前(新期赤城火山),西暦1251年噴火 約22万年前:大規模山体崩壊(梨木岩屑なだれ)
榛名火山 約50万年前~約24万年前(古期榛名火山),約5万年前~西暦1419年(新期榛名火山,中央火口丘形成) 約5万年前:カルデラ形成
箱根火山 約65万年前~約13万年前(外輪山形成期及び古期カルデラ形成期),~約8万年前(新期山体形成期),
~約6万年前(火砕流噴火期),~約4万年前~現在(中央火口丘形成期)
約6万年前:カルデラ形成(火口原湖:古芦ノ湖)
富士火山 約40万年前~約17万年前(先富士。古富士火山),約17万年前~約8千年前(富士火山古期),~約5.6千年前(須走a期),~約3.7千年前(須走b期),~約2.3千年前(須走c期),~西暦1707年(宝永噴火) 宝永噴火以後,火山活動確認されず
  • 愛鷹火山を除いた4座の火山は,全て地質時代的にみると最近まで活動していた,いわゆる「活火山」に含まれます。
  • 同様に4座の火山は,大きく見て「古期活動」と「新規活動」にわかれ,それぞれ「山体崩壊」や「カルデラ生成」の事実があります。
  • 箱根火山は,古期と新規の間が短いのが特徴ですが,榛名火山の場合は20万年ほどの休止期間がありました。
  • 従って,愛鷹火山は今後一切活動を再開する可能性は無い,とは言い切れないのかもしれません。
  • 富士火山は,新規の方が活動が活発であったために,「大沢崩れ」など一部を除いて山腹には比較的傷(掘れ溝:ガリー)がありません。
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