山は変わって行く ―そして生きている―
山は変わって行く ―そして生きている― 出典 : 風景あるくの記 pp.29-30.

 山梨県東八代郡の芦川村は,このように不安定な自然状態の中におかれた村である(写真7参照)。 花崗閃緑岩の多いこの地域の山の斜面には,風化によって崩れた石や泥が流れ出た「押出し」の地形がみられる。 そのため,一定量以上の雨水が浸み込むと動き出す可能性のある不安定な土地である。

 しかし,この村に住む人々の勤勉さは,この流れやすい泥の斜面に何段もの石垣を構築してそれを防いだ。 人家は最も安定したと思われる場所を選んで集落をつくっている。

 村の中央を流れる芦川に沿うた地域には,小さいながら足川の作った河岸段丘が発達している。 一番新しい段丘は明治時代にできたものらしい。  -後略-


第13図 断層山地の模式図。
矢印は運動の方向を示してある。
断層崖F-Sの麓に扇状地が発達している。
Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 旧芦川村(現 笛吹市芦川町)
三次元地形図上でマウスクリックすると「1/5万地質図幅『甲府』(出典,下記)」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。
  • 旧芦川村(現笛吹市芦川町)は,河口湖や西湖の北にそびえる「御坂山地」の北に位置する山深いところです。
  • 風景あるくの記に記載されている「花崗閃緑岩(地質図では石英閃緑岩)」は,実は極めて豪雨に脆い(崩壊しやすい)という性質があります(下記参考)。
  • 村の中心を東から西に流れる「芦川(あしがわ)」には,左岸右岸とも無数の「枝谷」が存在します。
  • どの枝谷も,河床の勾配が急であることから,豪雨時には「マサ」など大量の土砂を「土石流」となって押し出したことでしょう。
  • 枝谷から押し出された土砂は,芦川との合流点で堆積し,小さな「扇状地(沖積錐とも)」を形成しました。
  • 芦川沿いに歩いてゆくと,小さな扇状地が連続していることに驚かされることでしょう。
Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : □□□□

① 写真7 : 山あいの村,芦川村の全景(御坂山地)      ② 芦川村の典型的民家。
  • 枝谷から押し出された大量の土砂によって形成された小さな扇状地(沖積錐とも)群の先端をよく見ると,芦川本流によって削られていることに気づきます。 標高段彩図中に記載した「段丘崖」の場所です
  • 芦川本流の「下刻侵食力」が強大なため,枝谷が運んできた土砂を芦川がその下流に運び去ってしまったのです。
  • 「御坂山地」は,北の甲府盆地側に移動しつつ隆起している,という情報があります。 これは,旧芦川村を流れる芦川の河床勾配が急になる,ということを意味しており,結果的に芦川の下刻侵食力は当面衰えることは無さそうです。
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