動くこと大地の如し ―地形面交替の悲劇―
動くこと大地の如し ―地形面交替の悲劇― 出典 : 風景あるくの記,pp.22-23.

 このなかに鎌原部落がかろうじて,泥流から逃れた一部分を残している。 上州三原からやってくる者は,この部落を登ってゆくと,右手に小高い丘が見える。 丸い背の,この丘は鎌原泥流以前の噴出物からなる丘である。 丘の東に部落を見下せる位置に,更に小さい丘がある。 高温の泥流から逃れた人々の避難所となってところで,観音堂の境内となっている。 そこに浅間の爆発によって,不慮の死を遂げた人々の例が祀ってある。 九十余段あった石段が僅か十数段を残して,周囲を泥流が埋めたのであった。 まことに慄然たるもので,御堂の前には「史蹟天明三年浅間やけ遺跡」の碑が夏草の中に建っている(写真5参照)。  [風景あるくの記,pp.14-15.]

 今後何年かの後に,地球が温暖化し地球上の氷河が消えたならば,現在の海水面は東京・大阪・名古屋・サンフランシスコ・ニューヨーク・ロンドンの大都市はもちろん,その周辺まで昇り,二十世紀の地形面が海底に没し,新しい陸地から浸食された物質が,その上に堆積され,地質時代の化石のように都市の化石が出来上がることだろう。

Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 浅間山噴火に伴う「鎌原泥流」
三次元地形図上でマウスクリックすると「5万分の1 浅間火山地質図(出典,下記)」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。

① 本文の写真5。 鎌原部落西のはずれにある観音堂。 周囲の畑は天明三年の火山泥流が冷えた面。(図とその説明は,風景あるくの記より)
② 天明三年の鬼押し出しの溶岩と浅間山。(図とその説明は,風景あるくの記より)
  • 「鎌原観音堂」は,「浅間火山地質図」に記載されている「P02:嬬恋軽石流堆積物」の上に作られましたが,小高い丘になっているために,鎌原集落の避難場所になりました。
  • 「浅間山火山地質図」では,何枚もの「火山性堆積物(火山砕屑流堆積物と溶岩流堆積物)」が描かれています。 古い火山性堆積物の上に新しい火山性堆積物が載って,次第に地形が変わってゆきます。
  • また,火山性堆積物が覆い尽くした場所に大きな谷が形成されています。 火山性堆積物は,元々存在した谷を埋めたのでしょうが,谷らしき連続凹地として残ったことから,下刻侵食の再開により今の谷ができたのでしょう。 雨が降っても,地形は時々刻々と変わってゆくのです。
Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 海面が上昇した時の様子
  • まずもって,地球温暖化による海面上昇について,今から半世紀以前の昭和35(1960)年に言及していたことに,刮目すべきでしょう。
  • ここでは,全国地球温暖化防止活動推進センター(下記)の予測結果を流用して,以下のように海面の位置を予測してみました。
  • 予測地域は「関東平野」,「濃尾平野」と「大阪平野」です。
  • 条件は,西暦2300年に海面が現在より5m上昇した場合,としました。
三次元標高段彩図上で1回クリック,独自に作成した「標高5m以下水没予想図」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。
  • 関東平野で最も低い土地は, 荒川下流の左右の両岸に広がる,JR総武線の「平井駅」~「新小岩駅」間です。 海抜で-2m以下の所も存在します。
  • 海面が5m上昇する,ということは大変なことです。 防潮堤など,対策が採られない場合,東京の「山の手」や千葉県の「国府台」を除いて,いわゆる「下町」はほぼ全て水没してしまいます。
  • 特に広範囲なのは,「中川」と「江戸川」の流域で,「三郷市」,「八潮市」や「吉川市」あたりまで水没してしまいます。
  • 多摩川流域では,「蒲田駅」付近も例外ではありませんし,羽田空港も大半が水没してしまいます。
三次元標高段彩図上で1回クリック,独自に作成した「標高5m以下水没予想図」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。
  • 「濃尾平野」では,「蟹江駅」~「弥富駅」とその周辺が特に低地となっており,水没は確実と思われます。
  • 特に,「木曽三川」と呼ばれる「木曽川」,「長良川」と「揖斐川」の下流域が低地なので,例えば「岐阜羽島駅」付近が水没する/しない,の境界となるでしょう。
  • 一方,名古屋駅の東側は急激に高くなっていて,テレビ塔のある辺りは標高が15mほどあるので,水没を免れるでしょう。
  • また,「員弁川」の流域では,河口近くを除いてほぼ台地の上を流れているので,水没しないと思われます。
三次元標高段彩図上で1回クリック,独自に作成した「標高5m以下水没予想図」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。
  • 「大阪平野」の場合,水没を免れるのは「上町台地」とそれに続く南側の台地,「生駒山地」と「北摂山系」から押し出されてきた「(古)扇状地」の範囲となります。
  • 特に,「旧大和川」が流れていた「鶴見緑地周辺の土地」や「近鉄布施駅」周辺の土地は,大和側の「三角州」のために低地となっており,水没してしまいます。
  • 2025年大阪万博が開催される(た)「夢洲(ゆめしま)」は,土盛りのおかげで水没しないようです。
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